眠れない夜を抱いて
第2章 その男、αにつき
何とか動画は見せる事なく、俺も渋々ながら一部始終を話し
駅員におっさんを引き渡してから漸く事務室から解放された
「ねぇ、君この後予定ある?」
事務室を出てすぐに、とりあえず痴漢を捕まえてくれたお礼を…と思った矢先に話し掛けられた
「バイトある……そうだ電話!!」
返事なんかより、こっちの方が最重要だった
発情期の使い物にならない期間を認めてくれる、数少ない貴重なバイトなんだからクビになったら困る
ポカーンとしてるそいつを無視して、急いでバイト先に電話を掛けた
…ここの店長には嘘は付けない
適当にごまかしたりしたってすぐバレるだけだ
バレたらそれこそクビ以上に怖い
だから仕方なく、さっきの出来事を報告するしかなくて
『今日は帰れ。休んだ方がいい』
…そうあっさりと言われ『じゃあ、忙しいから切るぞ』と一方的に通話を切断され
「予定…なくなった」
未だにボケっとしているそいつに、やっと返事を返す事ができた