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「香田、お疲れ様。」
金髪ウエーブヘアの少年が店に入るなりニッコリと出迎えてくれた。
この少年がついこの間まで人類滅亡を目論んでいたなどと、誰も思うまい。
天使にしか見えない。
「エレミムもお疲れ様。」
そう香田も微笑みかけると、エレミムは嬉しそうに仕事に戻った。

齢十二歳程の見た目の彼は、監視下に置かれる目的で、喫茶濁天で手伝いをしながら暮らしている。
何も知らない者には学校に行かなくていいのかと突っ込まれるところだが、その知能は恐ろしく高かった。
読んだ本の内容は全て理解し暗記。
小学校一年生から中学三年生までの内容は網羅した(清和や茜、晴一、松井に教わりながら)
ヒトの感情については少し苦手だが、それは周囲の者に教わりながら学ぼうとしている。
(ただ、作者は彼の知能に追いつけない)

香田はいつもの席につくなり、彼女を探した。
いつもなら店に入ったと同時にそばに来てくれる。
そばに来て、あの女神のような笑顔を見せてくれる。
「…いないのか。」
思わず、ため息がこぼれた。
昼間さんざん先輩達に諭され、その気になった彼は午後、アゼットがその思考の八割を埋めていた。
言ってしまえば、会いたくて仕方なかった。

「アゼットちゃん、今日はデートなんだ。」
マスターの清和氏がテーブルにグラスを置く。ブルーとグリーンのグラデーションが美しいソーダに星を散らしたアイスクリームがポカリと浮いていた。
「え」
JKがいようものなら、キャー何これクリームソーダ？！素敵っ、写真撮っていいですかーっ！？って言っちゃうような物を目の前に置かれたにも関わらず、香田の頭の中は真っ白だった。
「…あ、えっと…。たまにはいいかな、と思って。うちの店でお世話になってる農家さんと。」
香田は尚、頭の中が真っ白だった。
「香田くん？」
「え、あ、はい…はい。」
「どうした香田、顔色が悪いぞ。」
エレミムが心配そうに寄ってきた。
「農…家。そりゃ、そりゃアゼットにはその方が…いいよな。はぁ…いただきます」
と、ストローに口をつけソーダを吸う。