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その名前が出てビクッとなる香田。
食後のコーヒーを啜る松井。
意味深に微笑む晴一。
「そうか。そうなのか。やっぱり…最近前にも増して(香田が店に)いるなぁって思ってたんだよ。」
「そ、それは！あそこだと集中して勉強出来るからでっ…」
「動揺してる香田くんにほっとする。」
松井も晴一と同じ表情でわらう。
「決してそんな、そんなやましい事は…」
「疚しいって事ないだろ。まぁ、うん、種族は違うが。いいと思うぞ。」
「アゼットの香田君への片思いは見ててなんとも言えない気分になるんだよね。」
松井がカップを置き、しみじみする。
「え、片思い？」
香田がその単語で固まった。
「片思いしてただろ？」
晴一も、香田よ気付いてなかったのかと言わんばかりに首を傾げる。
「え…え、えーーー。」
「あんなにウットリした目で見つめられて気付かなかったの？てっきり君の事だから気付いているものだと。」
松井が半ば驚いた表情を香田に向ける。

香田リョウ、気の利く男として評価される事は多かったが、残念ながら自分の色恋には鈍感だった。
ま、仕方ない。
鈍感になるよう、自分でフィルターをかけていたっていうのはある。
命懸けで戦わなきゃいけなかったし、そんな時に恋なんて、恋人なんて…作ろうとは思えなかった。
だからこそ、他人の色恋は応援した。
自分ができない分幸せになってくれと、言いはしなかったが応援した。
お前達の幸せは俺が守る！
君こそヒーローのカガミか。

そんな、香田リョウ。
みんな大好き香田リョウ。

「人類の平和は…ある程度保証されてる。もう俺達が骨を折る事はそうないはずだし。いいんじゃないかな？」
晴一が、優しい笑顔で香田を見つめた。
もういいよ、普通の男子高校生におなり、彼の目はそう言っている。

「アゼットなら…面倒みもいいし、君ともうまくやっていけそう。」
松井が少し考えてからそう呟く。
「あの、エレミムの面倒を見ていたわけだからね。」