お医者さんは何でも知ってるっ
第4章 ④
もっと深く調べていけば、
その手術の成功率9割
手術に伴って障害者になる確率1%未満
手術を受けた人の30年後の生存率…85%
未治療の場合10年生存率30%
手術を受けた後も成人期以降、死亡率が増加し、再手術、心不全、突然死、合併症の発症が有りうる。
という事が分かった。
どれもこれも確率ばっか。
やっぱり医学は数字でしかならない。
その数字は、私たち患者の生死によるものだというのに。
此処に書いてある情報は嘘だと思えなかった。
というのも、この病気は«難病指定»されていたから。
こんな私が?
難病指定?
スクロールする指を思わず止めた。
難病って、治すのが難しい病って事だよね。
…治らないんだ、
大人になっても。
忙しくなる鼓動が更に不安を煽った。
「っ…」
苦しい…
車がトンネルの中に入った。
スマホの画面がより一層白く光る。
トンネルのチカチカと光るブラウンのライトが、まるで何かのカウントダウンのようで、5,4,3,2,1…と、
思わず数えた。
人はよく、
"いつ何が起こるか分からない"
って言うよね。
じゃあ、
"貴女はこの日、死にますよ"
って言われたらどうする?
定められた運命に逆らう?
その日までの日々をどう生きる?
…簡単だよ。
とても逆らえない。
過去は絶対に変えられないから、どう生きようとも必ず"こう生きれば良かった"と後悔する。
逆らうというのは"その日に死なない"ということで、病気を治すことに他ならない。
だけど、病気を治す方法は無い。
根治できる治療法はないから、何か起こってからの対処法しかない。
「…」
何かが起こるのを未然に防ぐには、
この 年に1回の受診が必要だという。
なんだかここまで来ると、本当に突然死が来るような気までしてくる。
「…はぁ」
スマホから目を離し、顔を上げた。
「どうした?」
「ううん…何でもない。」
お母さんに気づかれた。
トンネルを抜け、視界が開けた。
日光が一気に車内に差し込んでくる。
暖かい日差しに加え、お母さんの優しい運転は、睡魔を誘う帰り道だった。