ジッパー様
第1章 弱味を握る女
───ガタガタン!
しまった。
私はある喫茶店の庭にある椅子に引っ掛かり、盛大に転んでしまった。しかもテーブルをも巻き込み、テーブルは私の足を直撃している。
「お客様? 大丈夫ですか?」
メイド服を着た女が慌ててテーブルと椅子をどかしてくれた。右足に痛みが走る。こんなところで盛大に転んでしまった上に怪我をするなんてついてない。
「……っ?」
ふと喫茶店の中から視線を感じた。
喫茶店の中は外からは真っ暗で何も見えない。だから営業しているのかどうか知りたくて庭に踏み込んだ私だが、どうやらこのメイド服を着た女はここの店員らしい……。