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ジッパー様

第2章 喘ぐ女たち

 いちごパフェとコーヒーが運ばれる。その間もその得体のしれない五本の指は、メガネ女の首もとをまさぐっていた。店員もそれには気づいていない。というより、気づかないフリをしている。


「いちごパフェ、おいしそうね」


 メガネ女はそう呟くと、苺を口に運んだ。
 咀嚼する様子を見つつも、私は首もとにある指が気になって仕方なかった。


 あの指は一体どこから伸びている?
 店内は薄暗いからわかりにくいが、背後は壁なはず。明らかにおかしいのに、店員やメガネ女は気づかないフリをしている。


「……んっ……」


 メガネ女がスプーンをくわえながら、体を震わせた。スプーンをくわえて、必死に声を出すのを我慢している。


「……はぁッ……」


 眉間にシワを寄せながら吐息をはくその表情は、オレンジ色の光に照らされて、やけに色っぽかった。



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