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ジッパー様

第5章 初めての誘い

「あ、あの……なんでもありませんので……」


 私は周りの視線が気になって俯いた。


「そうかい? 僕で良ければ相談に乗るけど」

「……っ!?」


 どういうこと?
 片桐部長が私の相談に乗るなんて……。


「すみません、大丈夫ですっ!」


 私はその場から逃げ出した。
 トイレの個室に駆け込んで、乱れた息を整える。


 ……ありえない。
 片桐部長が私を気にかけてくるなんて!


 片桐部長は部下からの信頼が厚く、いつも女性社員に囲まれていた。私から見ればキラキラした存在で、絶対に手の届かない存在だ。
 

 こんな地味で影の薄い私のことなんて、面接以来、忘れてると思ったのに……。


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