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ジッパー様

第5章 初めての誘い

「浮かない顔をしているね。何か悩み事でもあるのかい?」


 突然声をかけられて、私はハッと我に返った。そして声の主を確認して驚いた。


「片桐部長っ……」


 私に声をかけたのは、上司の片桐部長だった。
 今日もビシッとスーツを着こなし、四十代とは思えない若さをかもしだしている。


「いつもしっかりしている君が、今日はずっと浮かない顔をしているからね、朝からずっと気になっていたんだ」

「えっ……」


 片桐部長が朝から私をずっと見ていた?
 ありえない……。


 なぜなら私はこの会社では影が薄い存在で、仕事以外、誰とも関わっていなかった。もちろん片桐部長ともほぼやりとりすることはなく、まして仕事以外のことで声をかけられるのも初めてだ。


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