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ジッパー様

第20章 過去の記憶

「おお、いいじゃないか。とても綺麗だよ、シホ」


 父は私のドレス姿を上から下までじっくり見つめた。そんな父も今日はスーツに身を包んでいる。


「行こうか、シホ」

「はい、お父様」


 私と父は使用人が運転する車に乗って、飯島邸へと向かった。


「お前とこうやって外に出かけるのは久しぶりだな」

「そうですね……」


 私は車の窓から流れゆく風景を眺めた。街の風景が昔とすっかり変わっている。洋館がいくつも建ち並んでいて、まるで別世界に来たみたいだった。


 急に社交界デビューすることになって不安だったけど、今から新しい世界を知れるのかと思うと胸がドキドキした。


「お待ちしておりました、九条様」


 大きな洋館に着くと、使用人が出迎えてくれた。そしてなぜか目元を隠す仮面を渡された。


「これは……?」

「今日のパーティーを楽しむためのものだよ」


 父は何の疑問も持たずに仮面をつける。


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