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ジッパー様

第21章 ジッパー様との出逢い

「いやっ、離して……!」


 もう捕まってしまった。
 せっかく逃げるチャンスだったのに。


「静かに」

「!?」


 その声は黒澤の声じゃなかった。
 力強い手は私の腕を引っ張り、自身の胸に引き寄せる。そして私の姿を隠すように壁になってくれた。


「シホ! どこだ、シホ!」


 私たちの前を黒澤が通り過ぎて行く。通行人は何事かと、黒澤に振り返った。


「こっちへ」


 私をかくまってくれた男性はフードを被っていた。顔がよく見えない。私の手を引っ張ると、裏路地へと歩いていく。


 一瞬、信用していいんだろうかと思ったけど、私がふらついて彼が抱きとめてくれた時、その不安はなくなった。



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