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ジッパー様

第1章 弱味を握る女

「いちごパフェ」

「は?」


 メガネの女はニヤリと笑った。


「一人で惨めな思いをしてたから、友達のフリをしてあげたの。だからお詫びとして、あたしにいちごパフェを奢りなさい」

「……そんなことをしてくれとは頼んでない」

「え~ケチぃ」

「私は帰る」


 おかしな女と関わるつもりはない。
 この怪しい喫茶店にも二度と近寄ることはないだろう──と思ったのだが、女はクスクスと笑いながら私の免許証を指に挟んで見せつけた。


「いつのまに……」


 ズボンのポケットに入れておいたサイフごと抜かれていた。彼女がさっき私の名前を呼んだのは、免許証でも見たんだろう。


「ね、いちごパフェ、いいでしょ?」

「……」


 私は渋々頷くしかなかった。
 無理矢理奪い取るより、食べたいものを奢れば彼女は気がすむのだと思っていた。



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