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Hello

第37章 Be healed * バンビズ


Jun



たくさんの期待と大きなプレッシャーを背負い、今年のラストを飾る歌合戦の司会に決まった翔くん。

年末に向け、お互いにくそ忙しいスケジュールをこなし続け、いよいよ明日が歌合戦本番である。

翔くんほどの過密さはないにしろ、俺もリハーサルなどの仕事をこなし、くたくたで帰宅した。

そのあと帰宅した翔くんと、軽く飲んで、明日は頑張ってね、と寝室に。

もちろん、大仕事の前日なんだから、するつもりなんかなかったよ。

なのに、この人ときたら。




「ちょっ……ちょっと待って」

「……なんだよ」

「いや、あのさ」

「……うん」

「……やっ……ちょっと」

「……このボタンはずしにくいな」



おとなしく寝るのかと思いきや、ベッドに入るなり、俺に覆い被さってきて。
俺のパジャマのボタンを、その長い指で一つ一つ弾きはずしてゆく。


いやいやいや。
寝なくちゃダメでしょ!
寝不足ダメでしょ!
生放送だよ。


いつもならそんなことくらい……



「翔く……んっ……!」

「黙れって」



あらわになった肌の上を、翔くんの指が優しく滑る。
たったそれだけで、甘い声があがりかけてしまう自分に、呆れる。


いや……ダメだってば!


それでも頑張って、翔くんの手を必死で掴んで、その大きな瞳を見つめ返した。



「ダメ……ダメだよ、今日は」

「なんで」



翔くんは、おかしそうに目を細めた。
まるで、俺が言ってることは最初からきかないとばかりに。
その余裕な笑みに、一瞬くじけそうになったけど、俺は、再度力をこめて訴えた。



「だって……明日は大きな仕事じゃん」

「……ああ」

「体調万全にしないと」

「そうだな」

「ぁんっ……もう!聞いてんの?!」

「聞いてるさ」



首筋をぺろっとなめあげられ、ぴくりと体が浮く。
翔くんの、まったく意にも介さない態度に、腹が立つを通り越して、不安になった。


「翔く……」


「……だからだよ。だからおまえが欲しい」


なおも訴えかけた口を手で塞がれて。
ゆっくり近づいてきた翔くんは、低く囁いた。


ぱちくりと瞬きをすれば、翔くんは、情けなそうに眉をさげた。


「みんな俺を超人みたいに言うけど。それなりにプレッシャーもあるし、緊張もしてるよ。……だから、おまえの温もりがほしくて」


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