Hello
第39章 むすびつき * にのあい
Nino
それは、太陽もそろそろ沈もうかという頃。
オフだった俺は、例のごとく朝から晩までゲーム三昧中。
脅威の集中力を持続していたが、突然スマホのぴこん、と、メッセージを受信する音に、我にかえった。
時計を見上げて、誰かからの飯の誘いかな、と思う。
めんどくさいな……
無視を決め込み、再び画面に視線をやれば、ピコン、と、また音がなる。
……誰だ?
手をのばして、するっとスワイプしたら、トップ画面に、まーくん、の文字。
……相葉さん?
アプリを開くと、
『今から行ってもいい?』
…………。
今日は早く終わったんだね。
ちょっとにやける顔を自覚しながら、
「いーけど。んじゃ、ついでに飯買ってきて」
と、打ち返した。
オッケーのスタンプを確認して、俺は立ち上がった。
うーん、と伸びをしながら、バルコニーに歩み寄り、夕闇に包まれ始めた都心のビルを眺める。
オフなんてあっという間だ。
このまま夜中までゲームの予定であったが。
もうすぐ相葉さんが家にくる。
それだけでなんだか嬉しい。
俺は、冷蔵庫にビールがあったか確認するために、のそのそとキッチンに向かった。
「ほらほら。にの。あおいであおいで」
無理やり団扇をもたされて、つんとする酢飯をあおがされる。
確かに、飯を買ってきて、って言ったのは俺だけど。
嬉々としてしゃもじで酢飯を混ぜてる相葉さんを、俺は苦笑いして、見つめた。
遡ること数十分前、底抜けの笑顔と明るさを持って、デジタル音しかしない、しずかーな家にやってきた相葉さんは、
「手巻き寿司パーティーしよ、にの!」
と、ガサガサビニールから色んな食材を出してきた。
……手巻きなんて。
俺は、ナマ物嫌いなの知ってんじゃん。
戸惑った顔をしている俺に、相葉さんは優しく笑った。
「ナマ物はないよ。えっとね、あ、ご飯はレンチンね。スパムとーツナとープルコギも美味しいって聞いたから買ってきた。あと……」
「それって……手巻きなの?」
「そ。変わりダネの手巻き」
「ああ……そう」
「これなら、にのも食べれるでしょ?」
くふふっと笑って、相葉さんはにぎやかにキッチンに立ったのだ。