Hello
第45章 Pure * バンビズ
Jun
『スキダケド』
いや、わかってるよ。
ネタだって。
実際ウケたし。
お客さんも喜んでたし。
……俺も相葉くん好きだし。
………でもさ。
二回も繰り返して言うことないだろ?
……ちょっと拗ねるのは許してほしいよなって話。
「……え。まだふて腐れてんのかよ?」
翔くんが呆れたように、俺の顔をのぞきこんできたから、別に、と、顔をそらした。
いまだに子供のように拗ねてる自覚はある。
大人げないとも思う。
女みたいでしつこいな、とも思う。
あんな仲良しネタは日常茶飯事だもん。
だから、いつもなら笑って流せるんだけど……何故だか今回はモヤモヤしたままで、自分の中でうまく解決できないでいて。
……そう。きっと、忙しすぎて、翔くんとあんまり話をしてなかったせいだろうな……。
時は、ライブ後半戦のスタートでもある大阪公演。
深夜まで続いた打ち合わせから、ホテルの自分の部屋に帰ってきたら、
「お疲れ」
と、何故か翔くんが部屋にいて、迎えてくれて。
マネージャーに鍵を借りたらしい。
起きて待っててくれたことが嬉しかったくせに、素直に喜んでない俺を見て、翔くんは、はぁ……と、ため息をついた。
「……なかなかしつけーな、お前」
「あのことでしょ?だから、気にしてないって言ってんじゃん」
「……じゃあ、こっち見ろよ」
「えー?」
眼鏡をはずし、腕時計をはずして机に並べながら、顔を背けたら、翔くんはまたため息をついたみたいだった。
他人の前だといくらでも自分を偽れるけど、翔くんの前だと良くも悪くも素。
いくら年を重ねても、いつまでたっても、年下の我が儘な末っ子気質を隠すことはできなくて。
さらに、俺は、今さんざん頭を使って疲れてるし、で、感情のコントロールすら危うい。
ともすれば、また嫌みのひとつでも言ってしまいそうになり、俺は、だんまりを決め込んだ。
「潤?」
「………」
「おい、無視か」
「…………」
「……潤」
声音が変わる。
これはまずい合図。
翔くんを怒らせたら本末転倒だ。
もう……ほっといてよ……。
なんとか自己解決するからさ。