Hello
第48章 Punishment * バンビズ
Jun
いろいろと、ざわざわしている俺たちの周囲は、日にちがいくらたっても、なかなか収束することがなく。
下手になにかを言うと、それのあげあしをとるように、さらにざわめきが大きくなるのを懸念して、俺たちは黙っていることを選んでいる。
心苦しいが、黙るのが金。
真実なんて……言えるわけなんかないから。
俺は、熱いコーヒーの入ったマグカップを両手にもち、ソファに沈む彼のもとに歩み寄った。
「はい」
「おう……さんきゅ」
「平気?」
「……まぁな」
力ない顔で微笑んだ翔くんの目には深いクマ。
彼が原因で荒れている周囲の現状は、ことのほか深刻で。
図太い神経をもってるはずの翔くんから、どんどん生気が奪われてゆくのが分かり、俺も辛いが……どうにもできずにいる。
「もう……これ見ないで」
翔くんの手元のスマホを取り上げた。
「……うん」
素直にうなずき、コーヒーを飲む翔くん。
エゴサーチなんかやったって、いいことなんかひとつもない。
スマホの電源をおとし、翔くんから遠いところに置いた。
そして、俺もあえて濃いめにしたブラックを、口にした。
こんなことになったって、俺らの仕事量が減るわけではなく。
ラストイヤーの年末にむけて、ただでさえもギチギチのスケジュールなのに、カメラを気にするあまり、ほんの少しの自由時間まで奪われそうだ。
不条理。窮屈。不自由。
今の状況はそれでしかない。
「なぁ……」
「ん?」
「兄さんたち大丈夫かな?」
「大丈夫でしょ」
「……おまえは?」
「平気だよ」
「ごめんな……」
「……謝らないで」
項垂れる翔くんの肩を抱いた。
温かい体温を感じながら、翔くんの顎に指をかけて上向かせる。
黒い瞳は迷うようにユラユラしていて、いつもの力強さはない。
たまらずにその厚い唇を奪う。
「ん……んん……ふぁっ」
逃げようとする舌を追いかけて、より深く口づけた。
固まった体が、徐々に弛緩してゆく。