Hello
第49章 大事な人は * 山
Sho
このイベント当日が仕事だと、義理という名のチョコレートをあちこちから頂戴する。
断るのも失礼だし、と、営業スマイルでもって、ありがとうございます、と爽やかに受けとるが、持っているトートバッグに入りきらなくなってくると、さすがにうんざりする。
お返しも考えないといけないし……正直めんどくさいんだよな。
なるたけ女性のスタッフさんなんかには会わないようにするのだが、共演してるタレントさんはそういうわけにもいかず。
仕方なく誰からもらったのか頭のなかにメモし、例年のように、紙袋をガサガサ三つも四つも下げて、お菓子屋さんのような状態で帰宅した。
「……ただいまぁ」
玄関から帰ったことを知らせると、リビングからのんびりした、お帰りー、の声。
おや、今日は創作活動はしていないんだな。
俺は、いそいそとスリッパをはき、リビングに向かった。
絵を描いたり、粘土捏ねたりしてノってるときは、自室から一歩も出てこない人だから、仕事から帰ってきても会えない日なんか、ざらだ。
けど、今日はなんだか無性に顔が見たかったから、返事を嬉しく思いながら扉をあけた。
ソファに座ってテレビを見ていた兄さんが、こちらを見て、……色男め……、と呟いて苦笑いした。
「また、今年も豊作なこったな」
口を尖らせていうもんだから、俺はなるべく朗らかにその紙袋を見せた。
「でしょ。当分おやつには困らないよ」
「……翔くんがもらったものなんかいらねぇよ」
あきらかに不機嫌な声。
あれ、どうしたんだろう……
アイドル業やってると過去にはトラックでもらったりしてたから、こんなん今更じゃん、と思うけど。
てか、兄さんだって今まで星の数ほどもらってきたじゃん。
今日はたまたまオフだから家にいたみたいだけどさ。