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Hello

第49章 大事な人は * 山


結局。


お酒も刺身もチョコも食べずに、一戦……二戦と交え。

貫かれ続けた俺が、くたくたの体を、ぐったりとソファに投げ出していると、全裸の兄さんは、俺が買ってきたチョコを開けて、


「うまそ」


と、呟いて口にほおりこんだ。


「ん」


二個目は、口移しで俺にも食べさせてくれる。

有名メーカーのちょっと苦味のあるビターチョコ。
疲れた体には、ものすごくうまい。
うまいんだけど……。

いつのまにやらフラットな態度に戻ってる兄さんにちょっと戸惑う。
結局なんだったんだ?

俺は、何気ない風に聞いてみた。


「ねぇ……兄さん、さっきまで、何怒ってたの……?」

「あ?別に……」

「うそ……なんか……機嫌悪かったよ?」


これだけ好き勝手に抱いたあとだからか、兄さんは少し気まずい顔になった。
そして、がりがり頭をかいてから、ぽつりと言った。


「いや……バレンタインだし。なんか帰りが遅いから、翔くんが、誰かに飯でも誘われてコクられたりしたんじゃないかと……」


……?なんだって?


「……え……誰によ」

「……誰かだよ。翔くんを好きな誰か」

「そんなわけないじゃん……直帰だよ……俺」

「うん……そうみたいだね」

「そうみたいって……」


なにそれ。
全部兄さんの被害妄想???


俺が唖然としてると、何事もなかったような顔で、兄さんは悪びれずに、ふにゃりとあのいつもの顔で笑った。


「風呂入ろ。翔くん」


え……そんだけ???
そんだけですますの??


俺のべたべたな体を、兄さんはひょいと担ぎ上げた。
細くて小さいくせに、力は俺よりあるんだから。

まいるよな。


「きれいに洗ってやる」

「え……いや、いいよ」

「遠慮すんなよ」

「してないよ!」


わあわあいいながら風呂場に向かう。

意外と嫉妬深い兄さん。

俺はあなた以外見えてないんだよ?
いつになったらわかってくれるんだかなぁ……。


「ちょっ……やだやだ!触っ……」

「おい、力抜けって」

「ぁ……もうっ……」



fin💗

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