Hello
第53章 可愛い人は ② * 山
Sho
ソファーに仰向けに寝転んで、スマホを見てる智くんは、どうやら釣りの動画でも見ているようだ。
バシャッという音やら、Hit~!という声やらが、断片的に聞こえてくる。
忙しくて、なかなか釣りに出かけられないフラストレーションを、せめて動画で解消しようとしているのだろうか。
そういや、最近二人で外に出かけてないなぁ……
iPadで作業しながら、そんなことを思っていたら、突然ゴトンと音がしたものだから、え?と、驚いて顔をあげた。
すると手から滑り落ちたとみられる智くんのスマホは、見事に床に落ちている。
彼自身は、そんな高価なものを落っことしたのも気づかずに、いつのまにかすやすやと昼寝を始めてて。
スマホからは、何事もなかったように、相変わらずアングラーの陽気な声が流れていた。
壊れてないことにホッとしながら、手を伸ばしてそれを操作し、動画をとめた。
とたん、しんとする室内。
すうすうと智くんの寝息だけが響く。
俺は、iPadを置き、膝でソファーににじり寄り、じっと智くんの顔を見つめた。
この人の寝顔が、俺は大好きだ。
赤ちゃんのように無垢だけど、長いまつげや高い鼻からは、眠り姫のような色気もあって。
形のよい額は、つるつる。
少し開かれた唇はぷるぷるしてて、さぁ食べてくださいと言わんばかり。
……遠慮なく食べちゃうよ?
俺は、その唇にそっとキスをした。