Hello
第53章 可愛い人は ② * 山
とたんに、ふん、と鼻で笑う気配があり、驚いて顔をあげると、智くんが面白そうな瞳で俺を見てた。
俺はもう一度チュッとキスをおとして智くんの髪の毛をそっと撫でた。
「……起きてたの?」
「……しょーくんのキスで起きた……」
眠り姫みたいだね、と智くんはうーん、とのびをする。
「何時?」
「えーと……三時?」
時計を見上げ、レースのカーテン越しに窓の外に視線を向けた。
夏の空は既に西日がきつくなり始めていた。
空調のきいた部屋ではわからないけど、きっと今日も猛暑日なのだろう。
久しぶりに重なったオフだが、暑いし面倒だから、と朝から二人でダラダラすごして……この時間。
「1日終わっちゃったね」
智くんが笑うから、俺は、まだ終わってないよ、と、頭のなかでさっき思いついた予定を実行すべく、タイムスケジュールをたてる。
今からなら……間に合うかな。
「ちょっと出かけない?」
「……今から?」
智くんが、え……と、めんどくさそうに眉をしかめた。
だけど、面が割れにくいのは真っ昼間より、断然夜。
しかも今から行こうとしてる場所は、ついさっき気がついたことで。
確認したら、その通りだった。
きっと智くんは忘れてる。
俺は、トイレにたった智くんを確認して、とある場所にこそこそっと電話をかけた。