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Hello

第53章 可愛い人は ② * 山


はい、と智くんから青いヨーヨーを渡された。

俺は「ありがとう」と、うけとりながら、本当なら俺が智くんにあげたかったのにな……と、苦笑いだ。


「……今年も秒殺だったね」

「……面目ない」


楽しそうに赤いヨーヨーをてんてんと叩きながら、智くんはくすくす笑った。

こんなはずじゃなかったんだけどなぁ……と、自分もヨーヨーで遊びながらぼやくと、智くんは、小さく首を振る。


「……翔くんは、そんな不器用なところがいいんだよ」


ぼそっと呟かれて、ドキリとした。
チラリと見おろすと智くんは、上目づかいに俺を見てる。
その弧を描く口元が、めちゃめちゃ可愛らしくて、この場に二人だけなら間違いなく抱き締めていたと思う。

かわりに俺が繋いだ手に力をこめると、智くんは痛いよ……と、笑ってたけど、……伝わったかな、俺の気持ち。


「翔くん、りんご飴食べたい」

智くんのおねだりに、りんご飴を二本買い、歩き続けて、見覚えのある広場に出た。

花火の会場からちょっと離れてるけど、さすがに見物客の人混みに飛び込んでゆくのは勇気がいる。

俺たちは去年と同じベンチに座って、始まりまで、りんご飴を食べながら時間をつぶすことにした。

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