
Hello
第53章 可愛い人は ② * 山
青いヨーヨーに目星をつけて。
ちゃぽんと、こよりを慎重に水につける。
慎重に慎重に……そっと、引き上げようとしたら、水をたっぷり含んだそれは、プツッとあっけなくちぎれ。
「!!」
固まった俺を嘲笑うように、たぽんと音をたてて、無情にもヨーヨーは水面に逆戻りした。
……嘘だろ……今年も秒?
はーい、彼氏残念でした、と、出されたおっちゃんの手に、しぶしぶ桶を返す。
おそるおそる智くんをみると、もうおかしくてしょうがないといった顔だ。
くすくす笑いながら、器用に次々にヨーヨーをつり上げていく。
笑い声をたてたら、声でばれたらまずいから、智くんは懸命にこらえてるけど、肩が小刻みに動いてる。
マジで?と言われてるみたいだ。
五つつりあげたところで、智くんのこよりはちぎれた。
俺がひそかにしょぼんとしてると、露店のおっちゃんは、
「五個以上連れた人、二個持って帰っていーよ」
と、智くんに言ってて。
智くんは、ありがとう、というように微笑み、赤と青のヨーヨーを選んだ。
