テキストサイズ

Hello

第53章 可愛い人は ② * 山


腹の底に響く、ドンドンという打ち上げ花火の音。

人だかりから少し離れた場所から、夜空を彩る大輪の花を、智くんと見上げる。


「……綺麗」

「そうだね」

「久しぶりに見た……こんな花火」

「……まぁね。俺らの記憶にあるのは、自分たちの野外ライブの時くらいだもんね」


寄り添って手を繋いで。
空いてる手の指には、それぞれヨーヨーをぶらさげて。

二度目のお忍びお祭りデートに、俺は 大満足だった。

光に縁取られる智くんの幸せそうな顔を見下ろす。


最初こそ、サトコへの変身に抵抗はされたけど……結果オーライだよな。


「……翔くん」


さっき、超絶色っぽかった智くんは、今はとても美しい顔で……俺を見上げる。


「ん?」

「……ありがとね」

「……こちらこそ」


はにかむ智くんに、にこりと微笑んでみせた。


あなたと二人でこの景色をみれて幸せだよ。


誰もいなかったらこのタイミングでキスなんだけどなぁ……と、思いながら、ぎゅっと繋いだ手に力をこめる。

智くんは、ふわりと笑って、また夜空に視線を戻した。


帰宅ラッシュが始まる前に引き上げなきゃと思いながら、時間の許すギリギリまで、赤や緑に咲く花火を俺たちは見上げ続けた。



……来年も観に来ようよ。


……ふふ。いーね。




fin.



ストーリーメニュー

TOPTOPへ