Hello
第57章 そばにいる * にのあい
「あのヒョウ柄も似合ってたね…おし、できた」
相葉さんは、フライパンにカンとお玉を打ち付けて、キッチンから出てきた。
エプロンをはずして、おいで、と両手を広げられる。
俺は、のそのそ寄っていって、相葉さんの腕の中に入った。
俺より広い胸に頬をよせる。
相葉さんの匂いがして、とても安心できる。
相葉さんは、ぎゅっと俺を抱いて、
「んー……にのちゃんいい匂い」
と、言った。
俺と同じことを考えていたことに笑いが漏れる。
相葉さんは、俺のこめかみに唇をよせた。
「お疲れ様だったね」
「……うん……ふふ」
くすぐったくて、肩をすくめた。
デジタルの世界で好きなことを始めたものの、五人で動いていたときと違い、自分で何もかもを運んで行くことは、やはり容易ではない。
後輩も、しっかりしたやつらばかりだから、大分助かってはいるが、それでも何かあったときの責任というものは、自分にあると思っていて。
その重圧は、時々……ほんの時々感じてる。
むしろ、感じなきゃいけないと思うし。
デジタルの世界は、自由であると同時にリスキーな場所だというのは、承知してる。
ひとつの綻びが、取り返しのないことになる現象は、いやというほど見てきた。