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Hello

第58章 可愛い人は③ * 山


Sho



……さすがに、三年目ともなると、鈍感な智くんでも気がつくみたいだ。
カレンダーを凝視して、なにやら考え事をしてるみたいだから、何気なく、どうしたの、とたずねたら、


「……今年の例の花火大会……いつだっけかなーと思って」


なんていうから驚いた。
絶対また忘れてると思ったから、隙を見てまた女装してもらおうと思ってたのに。

……作戦変更しなくちゃ。

なんでもないふりをしながら、頭でそんな計算をしていたら、智くんは真顔でぽつんと宣言した。



「……今年は着ないよ」

「えっ?」

「女物の浴衣。着ないからね」


やられた!
先を越されて意思表示されたら、動きようがないじゃん!

絶句してる俺に、智くんは、悪い顔で微笑んだ。


「……密かに着せようとしてたでしょ?」


言い逃れなんかできる状況じゃない。


「だって可愛いもん……」


せめてもの思いで、精一杯反抗したら、智くんは

「……そうなんだ」

と、何故だかにこやかに頷いた。

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