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Hello

第58章 可愛い人は③ * 山


俺は、鏡に映った自分をみて呆然とした。


「わぁー!可愛い!やっぱり似合うじゃん」


俺の隣では、智くんがテンション高くはしゃいでる。


「さすがだね。めちゃめちゃ美少女に仕上がってる」


美容師の俺の友達を手放しで褒めてる智くんは上機嫌だ。

いつのまに連絡先交換してたんだか。

俺は、ため息をついた。


俺のダチの美容院に連れていってくれって言うもんだから、気が変わったのかとウキウキしていたのに。
なんだよ、これ。


「こいつ、すげー撫で肩だから、着物とか浴衣が似合うんすよね」


仕上がりに満足したのか、ダチが得意気に言うものだから、俺は、憮然と呟いた。


「……すげーっていうな」

「ううん。ほんと似合ってるよ。翔くん、やっぱ美少女だねー」

「…………」


嬉しくない。
嬉しくないけど、このテンションの智くんが見れるのは嬉しい……。

複雑な思いで、鏡のなかの自分をもう一度見つめた。

皮肉なことに俺のダチの腕は確かで。
ウイッグをつかったヘアメイクやら、髪飾りのチョイスやら……
ユリの花をたくさんあしらった赤と黒を貴重にしたレトロモダンな浴衣は……俺がいうのもなんだが……似合ってる。

「翔くんはさー目が大きいから、メイク映えするんだよね」

智くんが、嬉しそうにじゃれついてくる。


「ガタイのでかさはどうしようもないけど、彼女の方が背の高いカップルなんかいくらでもいるから、とりあえずおしとやかに歩け」

ダチが俺の髪飾りの花の位置を直しながら忠告してくれる。


……まじか。


「ふふ。翔くん。今日はショウコだからね」


智くんのダメ押しの一言に、俺は、仕方なく頷いた。

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