Hello
第60章 ⭐️⭐️⭐️ * 大宮
夕食を終え、自室に戻る。
サイドテーブルに大事に置いていたタイを手にとり、ベッドに腰かけた。
柔らかな質感のその柄つきのタイは、今までのミヤからしたら少し派手なように思えるが、王族の立場で過ごす今は普通のことなのだろう。
それすらも嬉しく思う。
きっと似合うだろうな。
俺は、一人でニマニマしてしまう。
マサキの話だと、ミヤは、最初は、俺に未使用品を渡そうとしたらしい。
だが、マサキが大胆にも、今、まさしくその首にしているそのタイの方が俺が喜ぶ、と指摘してくれたらしくて。
失礼ではないですか……?と、戸惑いながらも、マサキに従い、その場ではずしてくれたとのこと。
だから、これはミヤがギリギリまで身につけていたものだということだ。
マサキ、あいつも気がきくよな。
俺はそっと鼻先にタイをあてた。
やってることは変態みたいだけど、ミヤを感じたい。
…………いい匂い
ふわりと覚えのあるやさしい香りがした。
誕生日会で会えないのは残念だけど、こうやって俺を気遣ってくれる人たちから、ミヤの様子を聞きながら、これからもおとなしく待っていようと思う。
……俺も肌のケアとかいろいろして、女を磨いとかなくちゃね。
久しぶりに会ったミヤにがっかりされないように。
窓越しに白く光る月を見上げた。
遠く離れた国で、ミヤが同じ月を見ていてくれたらいいな、と、願い……俺はタイに静かにキスをした。
fin.