Hello
第60章 ⭐️⭐️⭐️ * 大宮
「タイをありがとうって」
「…………」
「カズはこれを、私だと思って、持っててって」
「……サトだと……」
俺は、指輪をそっと握りしめた。
手のひらからサトの温もりが感じられるようで、胸の奥が熱くなる。
「いつまでも……待ってるからって」
カエラが優しい瞳をして俺を見つめてる。
「…………そう」
涙がでそうになる。
誰もいなかったら、俺は泣いていたかもしれない。
「あ、泣く?泣く?」
「……泣きません」
「いいのよ。泣いても」
「泣きません」
きゃはっと笑うカエラを、じろりと睨み、俺は指輪をポケットにいれた。
完全に遊ばれている。
……でも礼は言わねばなるまいな。
「ありがとう……カエラ」
「お礼は乗馬でいいわ」
「じょ……」
「新しいいい場所みつけたの。お天気のいい日に付き合ってね」
カエラは、ふふっとわらって踊るように部屋をでていった。
乗馬か……
またハードルの高い遊びを要求されたものだ。
ショウリをみると、承知してますというように、頷いてる。
差し当り明日は、馬に乗る練習だな、と覚悟を決め、俺は空を見上げた。
同じ空の下、サトが笑顔で過ごしてくれていることを願いながら。
fin.