Hello
第60章 ⭐️⭐️⭐️ * 大宮
カエラは、はぁ、と、これみよがしにため息をついた。
「もう……カズは頑固だからしょうがないか」
「……すみません」
俺は、肩をすくめる。
王子になった当初から、縁談が次々舞い込んでくる俺は困り果て、自分の想い人はサトなのだと、カエラに白状して協力を申し出た。
カエラは、お節介な重鎮たちを黙らせてくれたが、そのかわりに彼女の遊び相手として任命された俺は、付き人だっころでは考えられないくらい、様々なことに付き合わされてる。
だけど、それがあるからこそ、今回のような誕生日会の招待も、俺のかわりに大の国まで行ってくれることを、カエラは、引き受けてくれたのだ。
俺が、そのまま、じっと黙ってると、カエラはおもむろにワンピースのポケットをさぐり、
「はい」
と、小さな袋を俺の手のひらにのせた。
「……なんですか」
「サトコから預かった。カズにって」
「…………」
袋をあけると、
「……これ……」
ころんとでてきたのは、見覚えのある指輪。
サトが、兄上であるジュンイチ様からお土産でもらって、気に入ってずっとつけていた指輪だ。
震える指でそれをつまみ、目の高さにもってくる。
サトは宝石は邪魔だからいらないと言ってた。
シンプルなゴールドのリング。
ずっとずっと右手の薬指についてた。