Hello
第31章 Be yourself *バンビズ
Sho
俺は不満だ。
……何故かって?
俺ん家のリビングには、でっかいソファがある
。
男二人で座っても、じゅうぶんに余裕があるくらいの皮のいーやつ。
寝そべってテレビだって見れちゃうぞ。
なのに、いつもいつもそこには座らずに、ラグに座り込み、ソファにもたれて、あいつは寛ぐ。
その方がテーブルは近いし、足も伸ばせるし、楽なのかもしれない。
まあ、それは分からないでもない。
でもさ。
俺がソファに先に座ってんのに、俺の隣をスルーして、地べたに座るって、どういうことだよ?って話。
今も、俺がビール缶を傾けながら、ソファに座っていたらさ。
もちろん、あいつが隣に座ることを想定して、端っこによけて座っていたらさ。
風呂から上がってきたあいつは、チューハイのプルをあけながら、
「あーいいお湯だった」
と、ラグに座りやがった!
丁寧に隣をあけているのにも関わらず、だ!
付き合って三ヶ月もたつんだぞ。
そろそろ空気読んでくれてもいいだろ?
「………潤」
「?」
缶に口をつけたまま、こちらを見上げる潤は、悶えるほど……可愛い。
「………」
「なあに?」
いや、可愛いっていったら怒られるからあんまり言わないようにしてるけど。
でも、まだ湿ってる髪のすき間からみえる、大きな瞳に、俺は一瞬口をつぐんでしまった。
「……どうしたの?」
缶から口をはなし、きょとんと、俺を見上げる仕草が、アラサーとは思えない無邪気さ!
……何を言おうとしたか、忘れちまったじゃねえか。
「あ、翔くんビールおかわりだった?」
「いや違う」
「じゃあなに?なんかアテでも欲しいの?作ろっか?」
「いやいらねぇ」
潤は、またコクコクチューハイを飲み、肩にかけたタオルで湿った髪をかきあげた。
「もーすぐZEROはじまるね」
「………」
そんなこと分かってる。
ZEROで村尾さん見れるのもあと少しだから、見れる日はこうやっていつもテレビをつけてる。
いや、だから、そうじゃなくて。
「……」
「……」
何も言わない俺から、潤は、ゆっくり視線をテレビにうつした。