Hello
第31章 Be yourself *バンビズ
Jun
風呂から上がってリビングに入ると、ビールをかたむけながら寛いでいる翔くんの後ろ頭がみえた。
「………」
冷蔵庫からアルコール度数高めのチューハイを、二本失敬しながら、翔くんが座ってるソファに目をむける。
……翔くんの隣がポッカリあいてる。
きっと、あれは、俺にそこに座れっていう、翔くんの無言のアプローチなんだろうね。
トクン、と心臓がなる。
俺は、きゅっと唇をかんだ。
きっと、恋人ならば、あの横に座るのが正解。
だけど……ごめん。
素面じゃ無理。
だって、あなたの隣に座ると緊張しちゃうから。
胸の鼓動が、指先の震えが伝わっちゃうんじゃないかって。
気になってしょうがないから。
こういう関係になって三ヶ月たつけど、いまだに信じられないし慣れないんだよ……。
ゆっくりソファに近づいた俺は、
「あーいいお湯だった」と、呟いて、わざとにラグに座りこんだ。
翔くんの無言の圧力をかわしながら、コクコクチューハイを一気飲み。
ビールの数倍はあるアルコール度数に、瞬く間に胃が火照る。
酒にはわりと強い方だとは思うけど、状況がそうさせないのか、早く酔いたいと思ってるからか、
いい気分にふわふわしてきた。
テレビで始まったZEROに目を向けて、手にしていた二缶目をあける。
「……」
ふと、隣に体温を感じて、顔をむけたら。
真横に翔くんの端正な顔。
「……っ」
ドキンと、心臓が飛び出そうになった。
翔くんは、いつのまにかソファから滑り降りて、俺の横に座り込んでた。
「……しょう」
くん、と言おうとしたら。
後ろからまわされた腕が俺を抱き寄せ、俺は翔くんの体に凭れさせられる。
「……っ」
直に感じる翔くんの温もりに、ドキドキと心臓が早鐘をうちはじめた。
……壊れちゃいそう。
「もっとゆっくり飲めよ……悪酔いするぞ」
俺を気遣う声が優しい。
ぐらぐらする頭。
………もう、酔ってるよ。
その証拠に、凭れさせられた体は、もう持ち上がんない。