Hello
第35章 大野さんと僕ら
Aiba ×
スイーツ部を自認している俺は、ライブの時だけじゃなくて、普段からビンビンアンテナはってる。
自分等の番組で紹介されたスイーツの店はもちろん、ドラマの現場なんかで、その手の話に詳しい女優さんたちから情報もらったりしてさ。
自らその商品を買いに行ったり、行列に並ぶのが無理なときは、マネージャーに頼んだりして、手にいれたりね。
それはぜーんぶ、我らがスイーツ部の部長に食べさせてあげたいから、なんだけど。
この思いは、どこまで伝わってんのかな……。
俺は、目の前で、フワフワのクリームがたくさんのったケーキを頬張るリーダーを見つめた。
「……美味しい?」
「うめ」
「ほんと?良かった。これ、涼子ちゃんに聞いた店なんだけどさ」
「ほー」
「そっちのザッハトルテは、渚さんに聞いて……」
「へー」
「もう!聞いてる?」
「聞いてる」
笑って突っ込んだら、思いの外冷静な声で、返事をされて、ちょっと面食らった。
リーダーの顔をみたら、普通の顔。
いつもの顔。
……いつもすぎて。
違和感。
「え、なに?どうしたの?」
「……んにゃ」
「え、なんか怒ってる?」
慌てて突っ込むが、リーダーはあくまでフラットだ。
無表情で、モグモグ口を動かしてるリーダーがなんだか怖い。
美味しいっつったじゃん!
え、なに?俺、なんかやらかした?
ケーキを買ってきて食べてもらってるだけなんだけど!?
俺が、1人焦っていたら。
リーダーがぽつんと言った。
「……相葉ちゃんさー……」
「……はい」
「……俺のために、女優さんに近づかなくていいよ?」
「え?」
リーダーは、そこで困ったように眉毛をさげた。
「なんかさー……相葉ちゃんが女優さんと楽しそうにしてるとさー……」
「……うん」
「なんか……モヤモヤすんだよなぁ」
……リーダーの言葉を反芻する。
反芻して……
思い至ったのはただひとつ。
「……ひょっとしてヤキモチ?」
思わず、聞いたら、リーダーは、うん、とも言わず、違う、とも言わずに、ちょっとだけ笑った。