Hello
第36章 Never mind * バンビズ
結構熱が高そうだな……。
彼のその熱い指に手を添え、その手をギュッと握ると。
潤は、ふっと俺を見上げ、少し微笑んだ。
「……なんか食った?」
「ん……さっき少し食べた……翔くんは?お腹すいてる……?」
言って、起き上がろうとする潤を制した。
「いいよ。飯くらい自分でするから」
「……できるの?」
「は。バカにすんなよ?」
不審な顔になった潤に、笑って見せて、立ち上がった。
ほんとは、何もいらないし、一刻も早くこの身を横たえたかった。
だけど、体調が悪いのに俺の心配をする潤に、そんなことを言いたくなくて。
ラーメンでも作ろうか、と、キッチンに入ったら、ミルク雑炊の鍋をみつけ、驚いた。
ったく……そんな体でキッチンに立ったってのかよ?
「おまえ……わざわざ作らなくて良かったのに……」
「……だって。翔くん、ハードスケジュールだったじゃん……?」
ぼんやりと受け答えをする潤が心配になり、もういいから、ベッドで寝ろ、と声をかけた。
無理しすぎだ。
すると、潤は、ふるふる首をふって、拒否した。
「やだよ……やっと翔くんに会えたのに……」
「……」
おや。
いつもより可愛いことをいってくれる。
俺は、苦笑いして潤に歩み寄った。
こんな体調のおまえを襲う気もないし、なにより俺も疲れてるから、今日はおとなしく寝るけどさ。
ぼーっと俺を見上げる潤の唇に、俺のそれを静かに重ねた。
カッサカサの唇。
「……ん……ぁ……うつるよ……」
「うつせよ」
「ダメだよ……はぁ……ん……」
舌をさしこんだら、その熱さに、こちらまで溶かされそうになる。
チュッ……と音をならして、顔をあげたら、ますますぼんやりとした顔になった潤が、俺を見つめていた。
なんつー顔してんだよ……
思わず欲情しかけた心に気づかないふりをする。
「寝ろ…シャワーあびたらすぐ行く」
「……ん」
キスしてやったら納得したのか、頷いた潤の肩口に腕をさしいれ、ゆっくりと体を起こした。
「翔くん……」
「ん?」
「……だぁい好き……」
天使のような微笑み。
「……」
ズッキュン。
だから俺は疲れてんだって!!
俺は、慌てて首をふり邪な心を追い出すのに苦労したのだった。
fin.