
僕のまーくん。
第21章 衝動
N side
「僕、もう帰ります」
立ち上がろうとしたら、先輩が
向こう側から、こっちに回ってきた。
パッと手を取られて、
びっくりした僕は、
思わずその手を
引っ込めた拍子に、バランスを
崩して床に尻もちついた。
「痛った……」
先輩が、尻もちついた僕と
同じ目線にしゃがみこんで。
「にの、大丈夫?」
って、その大きな目で僕の顔を
思いっきり覗き込んだ。
余りの近さに、ちょっと後ずさる僕。
「にの」
ちょっと……やっ!
先輩の顔がもっと近づく。
顔ッ!
近いッ!
「先輩、どいて下さい……」
「にの……やっぱ可愛い……」
………………。
「帰さないよ」
!?
肩をトンッて、押されて
その勢いで後ろに倒れちゃった僕。
……ヤバい!
この雰囲気……
「止め……て。先輩……」
先輩の男の目が僕を射るように
見つめる
バクバクする心臓が痛いくらい
鳴ってる
「先輩……どいて……お願い」
「にの……」
じりじりと近づく先輩の声、顔……
思わず泣きそうになる僕は
堪えながら、先輩を睨んだ。
「……だから、その目ヤバいよ」
先輩がフッと笑って
次の瞬間、僕に覆い被さってきた
「ちょ……先輩……止めっ……ん」
怖い!止めて!
「やだ!どいてっ……」
「にの……にの……!」
先輩にそのまま右手を
ガッツリ捕まれて……
反対の空いてる手で先輩の背中を
ドンドン叩くけど、敵わない。
力の差が違いすぎる。
同じ男なのに、遥かに僕の方が
抑え込まれて先輩は全然びくとも
しなかった。
まーくん!まーくんッ!
助けてッ!
ここには、いないまーくんに
必死に助けを呼ぼうとする僕。
「にの!にの……っ好きだっ」
先輩は力を緩めない。
「痛っ!先輩…ッ…止め…て…」
力で到底敵わない僕は
どんなに嫌がっても、先輩から
逃げれない状況に、
……
「やだぁっ……ウッウッ……ウェッ……」
「まーくんッ!助け……てっ!」
まーくんの名前を呼んだ。
