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僕のまーくん。

第21章 衝動



「あッ……痛ッたぁ……」

 
玄関にしりもちついた翔ちゃんは

大きな目を更に広げて、顔を擦りながら

こっちを見上げた。



僕は、翔ちゃんの胸ぐらをもう一度
しゃがんで、グワッと掴んで
強く引き上げた。


「……相葉くん……痛ッ」


僕は、こんな事……しかも、
親友に向かって今まで一度もした事
なかった。


抑えきれない翔ちゃんに向けた怒りに

掴んでる手に力が入る。




「……相葉くん……ごめん」





「……ごめんじゃねぇよ」



低い声が、玄関に響く。




「かずくん……泣いてたんだよ!」



「………………」



「くそ野郎が……」



「……………………」



「もう一発殴ってくれよ……」



「はぁ!?」


「にのに、とんでもない事
したのはわかってる……」


翔ちゃんの目が、苦しそうに
泳いでいる


「でも……相葉くんのものって
わかってても、抑える事が、
出来なかった……んだよぉ……」



小さくなっていく翔ちゃんの声が
震えているのが、わかった


「……なんでかずくんなんだよ……」



「くそっ……なんで
翔ちゃんなんだよ……」



力が抜ける。


「相葉くん……殴れよ!
お願いだ!」


翔ちゃんの胸ぐらを握りしめてる
緩んだ僕の手を、また翔ちゃんが
掴んで

殴れと言ってくる。



……………………。



「……なんで……」



色んな感情が、押し寄せてきた。


殴れない……


1回殴ってわかった、翔ちゃんの
かずくんを好きだと想う気持ちも

嘘ではないと知ってたから。



「……翔ちゃん、僕も……」




翔ちゃんが、こっちをじっと見ている



「僕も翔ちゃんにちゃんと話さなくて
ごめん!」


……僕も悪い。


ずっと言えるタイミングはあったのに。


言えない情けない自分がいた。


「相葉くん……」



「僕ら、本当に付き合ってるんだ」




「聞いたよ……にのから。」


翔ちゃんの胸ぐらを掴んでた手を
離して、玄関に座り込んだ僕に、
翔ちゃんが


「にの見てたら好きすぎて……
相葉くんのものだろうが……もう
抑える事が出来なくて……



……本当にごめん!相葉くん……にのも……」


そう言った翔ちゃんの、大きな
綺麗な目にもうっすら涙が滲んでいた

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