テキストサイズ

好きにしていいよ

第12章 樋口くんの憂鬱





「おいおい、七五三さんじゃねぇんだからマジうける笑」

「ごめんねー樋口くん、間違ったサイズで取り寄せちゃて」

「いえ、これでも大丈夫です。気にしないでください」




朝霧は生徒役で俺は教師役。

スタイリストさんが持ってきたスーツは、俺のサイズに合わなくて。

ゲラゲラ笑う朝霧を、睨みつけるも全く効果ない。

…スタイリストさんは許せても、この野郎は許せねぇ!!






念入りな打ち合わせの後、スタッフさんに呼ばれた。




『そろそろ本番始まりまーす』




イスから立ち上がる俺と朝霧。

分かったことは、決して朝霧がチャラ男だけの男じゃないてこと。

この仕事に真剣に向き合う姿勢が、ちょっとだけ、好感が持てた。




「お手並み拝見といきますか」




妖艶に微笑む朝霧に、視線が釘付けになった。

慌てて目を逸らしたけど、胸の鼓動までは収まりそうもなかった。


悔しい…っ

こんな奴に…ときめくなんて…っ!!


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