心の隙間に…「君を好きにならない」スピンオフ
第1章 出会い
突然の告白に驚いたが
なぜか悪い気はしない
それと同時に
俺が今
岸本洸太と一緒にいる
理由が見えてきた
岸本洸太が失恋したというのは
口実で
きっとオネェの策略なんだろう
いや
オネェというより
もしかしたら
司さんの…
「すみません騙したりして」
「いや、いいんだ。
オネェの仕業だろうけど
一人になりたくなかったし
岸本くんと居るのは
悪くないよ」
「本気にしますよ?」
「嘘は言わないよ」
岸本洸太は
少し照れた顔をして
ビールをまた口にした
「あの…」
「何?」
「コータって
呼んでもらえたら
嬉しいです」
「わかった」
「俺はマサシさんで
いいですか?」
「あ〜…」
「あ、いや、
苗字でもいいし
なんでもいいんで!」
黙り込む俺に
変なことを言ってしまったと
思ったんだろう
焦ったコータは
ビールをこぼしそうになっていた
そんなコータを見てると
なんだか
放っておけない弟みたいで
俺は
少し心が溶けるような
感じがした
「俺さ、マサシって
呼ばれてるけど
本当は翔輝って名前なんだ」
「そ、そうなんですか?!」
「あの辺、まだ素人で
本当の名前言いづらくて
マサシって言ったら
今度は訂正するチャンス
逃しちゃってさ(苦笑)」
「そのこと
バーテンさんも
向井さんも知らないんですか?」
「あぁ(笑)」
「なんかそれ
すげー嬉しいんだけど」
「だから
翔輝でいいよ」
「呼び捨てなんてそんな!
翔輝さんでいいです」
「好きなように呼べばいいさ。
それより
向井さんのこと…
知ってるのか?」
「あ、はい。
向井さんもチェンジのお客さんです。
最近はあんまり
いらしてませんけど」
「…そうか」