
BLUE MOON
第7章 立場
「…イヤ…っ…」
電気を消して…って言ったよね。
「まだだよ」
私の願いを無視した涼さんはバスルームに響かせるように腰を打ちつける。
立つこともままならないこの状況で
「腰落ちてる」
涼さんは私を攻め立てた。
ガクガクと震えっぱなしの腰はいつ崩れてもおかしくない。
「涼さ…お願い…」
…いつもみたいに愛して
想いを込めて私の腰を支える涼さんの手を握った。
「…うっ…ぁっ…」
どうしてこうなったんだろう。
大体想像はついたけどここまで私の感情を無視した形で抱かれるとは思わなかった。
いつもは痺れるほど甘く抱いてくれるのに
「物足りない?なら…」
繋がっているそばにあるまだ触れられてもいなかった蕾も
「イヤァ…っ…」
力任せな指の動きに痛みすら伴うほどで
「だから腰」
まるで別人に抱かれているようだった。
男の人だからたまにはこういうこともあるのだろう。
本能のままにというのか、欲を吐き出すためというのか
「涼さ…っ…」
でも、そんな単純なことではないんだよね
「そう、もっと突きだして」
「あぁっ…」
…何かあったんだ
お見合いの席を抜け出せなかった理由が
一流ホテルのパティシエが作ったモンブランをこんな時間にもって帰った来た理由が
「声、もっと聞かせてよ」
あったんだよね。
冷めた声で言葉を放たれたり
「…桃子」
シャワーの音に欠き消されてしまいそうなほど愛しい声で私の名前を呼ぶその声に不安が過る。
だからかな
「涼さ…」
その不安を打ち消すようにあなたの…涼さんの名前を何度も紡いだ。
「くぅっ…うっ…」
そして気付けば私は天を仰ぐことなく冷たい壁に頬を付ける。
彼だけが達した。
「…ゴメン」
涼さんは私の背中に飛ばした分身をシャワーで流しながら小さな声で謝った。
背中を拭う指先はまるで腫れ物に触るよう。
優しいのに震えているようで涼さんへの想いで溢れた心さえも洗い流されてしまっているようで
「…ゴメンな」
何度も謝る彼の姿を振り向いて見ることも出来ない私。
「モモ…ゴメン…」
私はただ首を横に振るしかなかった。
