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BLUE MOON

第8章 過ち


オフィス街の明かりも寂しくなった時間

「おまえ…何してんだよ」

今朝、今日はカレーを作ると張り切っていたモモの待つ家に心を半分以上持ってかれていた俺の前に

「だって…あれから涼くん全然連絡くれないんだもん」

雅が現れた。

「で、どうしたの?」

赤いバックを左右に揺らして唇を尖らす雅は

「せっかくの週末だし…ご飯でも食べに行こうかなって」

いつもと変わらないペースで

「おい、離せって」

「イヤだ」

俺の返事も聞かず右腕に華奢な腕を絡めて舌を出してイタズラに笑った。

「雅…」

まだ会社から数歩歩き出したこの場所で俺は何をされているんだ。

「おぃ!ちょ、ちょっと待て!」

大きな溜め息をひとつ吐くと雅は強引に腕を引き

「やめろ、雅!」

「やめない!行くったら行くの!」

待たせておいた運転手がドアの前で待つ黒塗りの車に俺を引きずり込んだ。

…最悪

「拉致んなよ」

力任せに手を振りほどくのは簡単だった。

けど、ここは会社の目の前でオフィス街のど真ん中。

行き交う人も少なくなりつつある時間ではあったが場所が悪い。

「どういうつもりだ?」

俺は取り敢えず車に乗り込み雅を咎めた。

「だって…」

「だってじゃないだろ?強引に車に押し込んどいて」

雅は昔からそうだ。

誠の後ろを着いてくるだけかと思いきや気に入らないことがあると強引に物事を進めようとする。

典型的なお嬢様なのかもしれない。

だからだ、俺が少し強い口調で責めると唇を尖らせながらも申し訳なさそうに俯く。

そして自分の想いを

「こうでもしないとあの人のところに帰っちゃうじゃん」

伝える。

そうすればどうにかなると踏んでいるのだろう。

でもな、俺はもうあのときのオレじゃない。

それが例え親友の妹でメインバンクの頭取の娘でも

「当たり前だろ。一緒に住んでんだから」

ハッキリと告げられる。

「すいません、次の信号で止めてください」

その瞬間に雅の瞳が曇ったとしてもだ。

俺は雅の頭に手を乗せて

「ちゃんと話し合おうって言ったよな」

視線を重ねることのない瞳をに伝える。

「話し合ったって無駄だよ」

「雅、いつまでも子供みたいなこと言わないの。じゃあな」

車から降りるとすぐに空を見上げた。

そこにはいつもよりも小さく見える丸い月が輝いてた。

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