BLUE MOON
第9章 責任
「もしもし、涼くん!」
涼くんと連絡がとれたのは翌日の夕方だった。
仕事が一段落したからと掛かってきた電話。
私はワンコール目で声を届けた。
だって最後の作戦がどうだったか気になるじゃない?
でもね、嬉しいことに私が急かす間もなく
『…別れたよ』
小さな声で平静を装った声で届けてくれた。
『別れたよ』って言葉の意味は私を婚約者として迎えてくれるってこと。
昨日の作戦が功を奏した。
子供が出来てるって吹っ掛けて大正解だったんだ。
話したときの彼女のあの顔。
ウフフ、一瞬で勝敗がついたと感じた。
やっと…やっと夢が叶った。
「私いいお嫁さんになるからね」
『あぁ』
そんなに落胆した声を出さないで
あの人のことなんて私がすぐに忘れさせてあげる。
何をしてあげようかな。
二人で時を刻み始めるって意味で時計でもプレゼントしようかな
そうね、それならパパの行きつけのフレンチのお店を予約してそれから夜景が綺麗なスイートで初めての夜を迎えるのもいいかもしれない。
あっ、その前にそろそろ女子日だからそれに合わせて残念だけど赤ちゃんがダメになったってもうひと芝居打たなくちゃ。
「涼くん幸せになろうね」
『あぁ』
そうそう、あのラウンジの支配人にもお礼にいかなきゃね。
まさかあそこまでうまくいくとは思わなかったもんね。
脱がすのは大変だったけど私と一夜を共にしたってしっかり勘違いしてくれたし
っていうか、あそこまで巧くいったってことは少し薬の量が多かったんじゃないかな。
結果オーライだからいいか
『悪いけど仕事が残ってるから』
「ゴメンゴメン!」
赤ちゃんがダメになったって知っても私のカラダに傷をつけたとあなたは心を痛めるでしょう。
「ねぇ!待って、今週末空いてる?」
『あぁ』
「じゃあ、会えるよね」
『…』
二人の大切な命が絶えたことで私たちの絆がもっと深くなる。
彼女のことなんかどうでもよくなるはず。
「お仕事頑張ってね!」
『あぁ』
…ブチッ
「酷ーいっ!」
涼くんの心が落ち着けば会社だって私たちだってきっと幸せになれる。
「ウフフ…アハハ…!」
ねぇ、世間知らずの純粋な彼女さん
“ウソも方便”って知ってる?
これから私は涼くんに愛されるの。
あなたの代わりにたっぷりね。