BLUE MOON
第2章 恋心
最上階にある眺望抜群の社員食堂の片隅で
「はぁ~」
大きな溜め息を吐くのは
「ダラダラ食べてるとお昼休み終わっちゃうよ?」
「わかってる…」
幸せ絶頂…なはずの園田桃子25歳だった。
「はぁ~」
彼女は突然舞い降りた幸運に心踊らせていなければならないのに眉を八の字に下げて溜め息を吐いていた。
「桃子、いい加減に食べなさい。」
その大きな溜め息の原因は2週間前の満月の夜、誰もが羨む営業部のエースから突然交際を申し込まれたということ。
何がどうなってそんなことになったのかは等の本人も未だにわからないらしいんだけど
「まだ進展ないの?」
「うん、営業マンとアシスタントのまんま…」
次の日 どんな顔して逢ったらいいのかとドキドキしながら出社しても 期待を裏切り甘い言葉を掛けられるわけでも誘われるわけでもないらしく…
「毎日一緒に働いてんだから電話番号ぐらい聞けばいいじゃない」
「それが出来たらこんなことになってないよ…」
ただ毎朝コーヒーを淹れて頼まれた仕事をこなすだけの日々がかれこれ2週間も続いてるそうで
「周りにバレないようにしようって決めたのはアンタたちでしょ?」
始まったはずの恋が進展しないもどかしさに溜め息を溢していた。
だって二人の話を唯一知っている私から見ても二人に甘さを一ミリも感じない。
そう。仕事のパートナーにしか見えないのだ。
「桜木チーフね…」
桃子は知らないみたいだけどチーフにはいろんな噂がある。
それはもちろんオンナ関係
モデル並みの甘いマスクに高身長。おまけに将来を約束されているエリートとくれば世の女性人が放っておくわけがない。
この私だって同じ空間にいるだけで浮き足立つというか目の保養にもなっている。
あわよくば…なんて気持ちでベッドを共にする人だってたくさんいるだろう。
だから2週間前に桃子からこの話を聞いたときは耳を疑ったし大丈夫なのかと心配もした。
でも、桃子からの話を聞いていると傷が深くなる前に気付けて良かったんじゃないかって心の片隅で思ってたのに
「あ…お疲れさまです」
どうしてかな
この人がこの時間に会社に居ることなんて滅多にないのに
「園田さんどうしたの?」
社食にいる女子社員の視線を一気に集める男が私たちのテーブルに付いて心配そうにカノジョの顔を覗き込んだ。