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BLUE MOON

第10章 モノクロ


バシッ!

「痛ぇ!」

ぼんやりと薄い雲から顔を出す月を眺めていた。

「大袈裟だな」

魚住は俺の横に並ぶと同じように黒く染まった空を見上げた。

「なんだよ」

「一人じゃ寂しそうだったから」

「阿保か」

魚住はよく俺の横にこうやって並ぶ。

それはモモと別れてから

「強がんなって」

「強がってないよ」

大切な人を手離した俺は魚住からは小さく見えているのかもしれない。

「はいはい」

雅との破談は思った以上に大変だった。

水に流せと言う親父とお袋と、許してやって欲しいと頭を下げる雅のご両親

会社のためには俺が首を縦に振れば丸く収まったのだろうが

『申し訳ありません』

俺こそ何度も頭を下げて両家を説得し続けた。

それはあの日、俺を睨み付けたモモの瞳が未だに忘れられないからだ。

付き合うことも同棲することも、傍に居続けることすべてにモモは遠慮していた。

それを俺が無理矢理押し通して心を奪ったのに、奪った瞬間にそのすべてを裏切った。

「ももちゃんから連絡来た?」

「来ないよ」

それなのに、毎日スマホを眺めては溜め息をつく日々を送っていた。

「麻里ちゃんはまだ連絡先教えてくれないの?」

「教えてくれるわけないだろ」

あれだけ酷いことをしたんだ、掛かってくるはずないとは思っているのだけれど

「探しにも行ってないのか?」

「あぁ」

心のどこかでは期待している自分がいたりして…

いや、ちがうか。

「俺も付き合ってやろうか?」

「大きなお世話」

あれから半年以上の月日が過ぎたんだ、モモが新しく歩み始めたその道を俺がまた壊してしまうんじゃないかと無駄な心配をし始めていた。

「どうした?五十嵐」

「チーフがノロノロしてるから 俺、そろそろ拐いに行きますけどいいですか?」

俺よりも若い五十嵐はそんな俺に平気で吹っ掛けて

「この間も言いましたけど、俺も桃子さんが欲しいので遠慮はしませんから」

なんて黄昏てるオジサンに自信満々に宣戦布告をし続ける。

「知らねぇぞ、五十嵐は若いから瞬発力があるからな」

「うるせぇよ」

水族館がある街の小さなカフェ。

たったそれだけがモモに辿り着くためのヒント

覚悟はできてる。

…モモ

もう一度あの鮮やかな景色を見たい

二人で肩を並べて見たあの色彩に溢れている何でもない景色を…

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