BLUE MOON
第5章 嫉妬
「そんなに心配してくれてたんですか?」
「そりゃするよ」
涼さんはソファーに座る私の膝に頭をのせて唇を尖らせていた。
「私はそんなつもり全然ないのに」
「…でも仲良さげじゃん」
職場ではワックスでキメている髪を梳くように撫でながら
「仲良しっていうか…あの人あぁ見えてちゃんと指導してくれるのでスキルアップにはなるんですよ」
子供のように拗ねた彼に言葉を紡ぐ。
「だからそれが…」
「はぃ?」
「…なんでもない」
涼さんはクルリと体を反転させて横を向いてしまう。
「涼さん?」
返事もしてくれない涼さんは腕を組んで目を瞑って
「もう…」
本当に拗ねてしまったみたい。
そんな涼さんを柔らかな髪を撫でながら
「私だって…不安なんですよ?」
少しだけ胸のうちを明かす。
「涼さんはモテるから…」
「それは『オレが』じゃなくてじいちゃんの孫だからだろ?」
*
「違いますよ。カッコいいし優しいし…おまけに仕事だってバリバリ出来ちゃうし」
いつの間にか立場は逆転し
「そんなことないでしょ?」
「ありますよ。大ありです」
撫でていてくれた手を発する言葉と同じタイミングで大きく振りながら今度はモモがぷっくらと頬を膨らませていた。
「涼さんの周りにはいつも綺麗な人が傍にいるし…」
「それは勝手に寄ってくるだけ」
俺ばっかりがヤキモチ妬いてんのかと思ったら
「私が涼さんと少し話すだけでどれだけの人が睨むと思ってるんですか…」
「そうなの?」
嬉しいことにモモもしっかりと妬いていてくれていた。
「私の涼さんなのにって…」
こんな可愛い言葉まで添えてくれて
「五十嵐さんと仕事の話をしただけでこんな風に言われるなんて…」
ダメだな、モモを守るために二人の関係を秘密にしてきたのに
「私は信用がないですね」
「そんなこと…」
こんなに寂しそうな顔をさせるなんて。
俺は居心地のいい膝から起き上がりモモを抱き寄せて
「ゴメンな少し言いすぎた」
背中を擦った。
「モモのことはもちろん信用してるよ…でも…」
「でも?」
「実はアイツ…悪い癖があって」
もしものためにモモにはきちんと話しておくべきだ。
「人のモノが欲しくなるタイプなんだ」
「どういこと?」
「だから…人の彼女を横取りする悪い癖があるんだよ」