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BLUE MOON

第5章 嫉妬


「もしかして私をってことですか?」

真面目な顔をした涼さんが何を言い出すのかと思ったら

「プッ、アハハっ…無いです無いです」

あの五十嵐さんが私を選ぶだなんて。

「こんな地味な私を選ぶのは物好きな涼さんぐらいですよ」

私の趣味ではないけれど五十嵐さんも涼さん同様、女子社員の人気を集めている。

「物好きって酷くないか?」

「だってそうじゃないですか」

五十嵐さんは私の前ではオレ様で振る舞うけど 他の女子社員の前だとあの馬鹿丁寧な言葉を巧みに操り彼女たちの心を奪っていた。

二人の周りに集まる女性はどの女性もお洒落な服を身に纏い 艶やかな髪を巻いたり編み込んでアップにしていたり

「私は地味キャラですし」

いつも同じような格好をしている私とは大違いな人たちばかり

自分にお金をかけてこなかった私なんて彼女たちの足元にも及ばないのが現実で…

だから私は胸を張って五十嵐さんの悪い癖を否定できる。

「涼さんは考えすぎです」

両肩を抱いてくれている涼さんの手を払い指を絡めてアーモンド色の瞳に笑いかけた。

だってこんな幸せな今だっていつ心変わりされて幕を引かれるのか未だに不安なんだから…

*

「モモ…」

俺の気持ちはどうして伝わらないのだろう。

「キミは勘違いしてる」

柔らかな髪をかきあげて丸い額に俺の額を付けた。

…ったく

ベッドでどんなに愛しても

「惚れた女の心配をして何が悪い?」

「涼さん…」

いつもキミの心に届かない。

だったらありったけの言葉を使って言葉を紡ごうか。

「地味だなんて思ったことは一度もないし、周りに集まってくる娘より断然魅力的だと思ってる」

額を重ねてるからキミの表情はあまり見えないけど

「モモは俺が選んだ最高の女性だよ。そんなキミをあの五十嵐が放っておくはずないだろ」

触れている肩先が震えているのがわかる。

「俺は誰にもキミをを渡したくないんだ。だからお願い…」

少しでも俺の気持ちが届いてほしい。

「そんな風に自分を卑下しないで」

「涼さ…んっ…」

まるで紡いだ言葉をモモの体に埋めるように唇を重ね

「…んっ…ハァッ…」

想いのままにソファーに押し倒した。

彼女のなめらかな肌に狂ったように朱色の花を咲かす。

「好きだ…愛してる」

どうかキミに届け…

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