BLUE MOON
第5章 嫉妬
わかってはいた。
「原因はやっぱり俺だったな…」
楽しませてあげることよりも悲しませることの方が多いだろうって。
俺の体にすっぽりと収まるキミの体は華奢で 想いのままに抱きしめたらそれこそ壊れてしまいそうで
「あれは友達の妹だ」
それでも自分の一部にしたいと強く抱きしめて想いの丈をぶつけてみる。
「妹?」
人の気持ちに絶対なんてない。
「そう幼馴染の宮本誠の妹、雅だ。」
ずっと一緒にいようって神様に誓ったってあっさりと別れてしまう人たちはごまんといる。
「どういうわけだか昔から雅は誠の後をついてくるんだよ」
だから 人との絆はどれだけ脆いのかわかってるつもりだ。
「今度ちゃんと紹介するよ」
だから必死で繋ぎ止めたくて…でも縛りたくなくて
「あの…幼馴染の妹さんとこんなに頻繁に会うんですか?」
「たまたまだよ、誠に頼んでいた物を忙しいアイツの代りに届けてくれたんだ」
俺は立ち上がり今日雅から預かった小さな袋を手に取ると
「作戦失敗…サプライズは俺には不向きなんだな」
俺はしゃがみ込み床に座り込んだままのモモに差し出した。
「何ですか…これ」
「開けてみて」
モモは俺の顔と包み紙を交互に見ながら丁寧に開けていく。
「…え」
そして大きな瞳をさらに大きくして俺を見上げると
「私にですか?」
「他に誰がいる?」
包み紙ごと胸にギュッと押し当てて一筋の滴を真っ直ぐに落とした。
「センス悪かった?」
そして俺の問いに全力で首を横に振り
「…こんな綺麗な三日月見たことないです」
また一筋滴を溢した。
いつ見ても綺麗な涙だと思う。
「恥ずかしながら、モモに俺の気持ちを伝える術がこれしか思い付かなかったんだ」
贈ったのは誠の友人のジュエリーデザイナーの一点物
イエローダイヤで埋め尽くされた三日月のネックレスはモモにぴったりだと思った。
あの日これを見せてもらうために誠に会ったなんて恥ずかしくて言えないけど
「私にはもったいないです」
「そんなこと言わないで。ほら、つけてあげるから後ろ向いてごらん」
恐縮しながら背を向けうなじを向けるキミは本当に可愛くて
「ごめんなさい」
「違うでしょ?」
「…ありがとうございます」
首をすくめながら微笑むキミを抱き寄せて
「どういたしまして」
堪らずキスをした。