BLUE MOON
第6章 星空
「海もいいけど山も捨てがたいですね」
お節介な魚住の計らいで俺たちは同じ時期に夏休みをもらえることになった。
「でもなぁ海は混むし…」
という事で、真剣な眼差しでPCを覗くキミの横顔をビール片手に特等席で眺めていた。
「山もそれなりに混むよ」
「…うーん」
俺に話しかけているのかそれとも独り言なのか、口をへの字に結ぶモモを夏休み中ずっと眺めているのも悪くはないけど
「涼さんはどこか行きたいところないんですか?」
「姫となら西でも東でも」
「またそうやって」
キミの笑顔が見れるならどこにだってお供する覚悟でございます。
「もうわかんない」
しばらくするとモモは椅子に凭れて唇を尖らす。
どうやら姫のお眼鏡にかなった場所はなかったようで
「急いで決めることもないんじゃない?」
「そうだけど…」
溜め息混じりにマウスを動かし始めるキミはこの旅行を楽しみにしてくれているだと思った。
「モモは元々夏休みをどう使うつもりだったの?」
拗ねた姫の頬を機嫌を取るようにつつく
「お姉ちゃんのところに行こうかなぁって」
「仙台にいる?」
「はぃ毎年行ってるんですよ。夏休みぐらいしか顔を出せないので」
俺と同じぐらいの年のお姉さんがいるとは聞いていた。
モモの両親が亡くなってから社会人になるまで親代わりとなり育ててくれたと言っていたっけ。
「今年は行かなくていいの?」
「…」
この子は本当に分かりやすい。
「ちょっと貸して」
モモがずっと眺めていたPCを横からサクサクっといじって
「ゴホンっ、それでは俺のプランを発表します」
目を輝かせ始めたモモにプレゼンする。
「二泊三日の予定で仙台方面に向かおうと思います」
「はぃ!」
「一日目はお姉さん夫婦と逢って挨拶させてもらって…2日目には観光して」
モモには申し訳ないが仕事柄俺は夏休みをそんなに長くはとれない。
「詳細はこれから詰めるとして…大まかなプランはこんな感じでいかがでしょうか?」
プランが決まっただけなのにどうしてキミは瞳を潤ませるかな
「紹介させていただけるんですか?」
本当に俺をなんだと思ってるんだ。
「当たり前でしょうが」
大切な妹を俺がいただくんですからね。