オキナグサ
第5章 お付き合い
「あ、ごめん。彼氏来たみたい。もう行くね」
これは別に忠告じゃないんだけど、あんまり遊んでばっかりいちゃダメだよ?
俺みたいになっちゃうから
笑顔で手を振ると若干頬を染めたのは、俺みたいなゲイが珍しかったからかな
それはそれは
世の中を知れて良かったね
「朝陽さん!」
「聖くん」
遠くから俺を見ていた朝陽さんに近づくと、俺の後ろを指差した
「よかったのか? あの……」
「ただのナンパでしょ。年頃の男の子に通過儀礼か何かのように声かけて来るだけだよ」
「そんなことはないと思うが……」
いやでも、早めに来てて正解だった
まさか待ち合わせの10分前に来るとは思わなかった
俺が遅かったら朝陽さんがナンパされてたな
「? なんだか、機嫌がいいのか?」
「うん? そうだね」
俺の目の前で女性とはいえ、他の人に話しかけられてるとか嫌だから
「さ、ご飯行こっか。何食べたい?」
「……っ」
後ろから腰に手を添えただけで顔赤くしちゃってる
そういえばノンケかもって悩んでたんだから、男とデートも初めてなのか
ちょっと優越感
「朝陽さんの好きなの食べに行こう?」