
オキナグサ
第9章 狂嫉
「やはり今日はこれで帰ろう。また会社でな、加賀」
「……」
見送る言葉も言わない朝陽さんは、日高さんが完全に店から出て行くまでずっと見送っていた
「……朝陽、さん?」
「………………帰ろう。お代はこれで、お釣りは結構です。ご迷惑をおかけしました」
日高さんと同じようにカウンターにお金を置いた朝陽さんは、荷物を持つと俺の腕を引いて店を出て行く
扉から出る直前に目が合ったママは、迷惑と言っていた割には楽しそうな顔をして俺に手を振っていた
人の不幸を楽しむな……!!!
グイグイ手を引かれて、通りでタクシーに押し込まれて
連れていかれたのは朝陽さんの家
いや、もともと来るつもりだったんだけどさ
でもこの状況っていうのが
不安っていうか
「わっ……!?」
そして入れられたのは、部屋として使うには狭い…1畳ぐらいの…物置き……? 納戸? ウォークインクローゼット?
みたいなところだった
窓もなく少しの荷物が置いてあるそこに突き飛ばすように入れられて、体勢を崩した俺は床に倒れこむ
転んだっていうよりか、床に手をついたって感じだったから痛くはないけど
