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好きにさせて

第9章 理由


「尚も知ってるけど
お父さんは
昔から怖い人でね」


「あぁ…せやな。
あんま見たことないけど
イカツイ感じやったし
昔、そんな話してたもんな…」


「お母さんに怒鳴ったりするから
私、小さい時から
お父さんのこと苦手で…

好きじゃないの」


茜はそう言うと
うつむき

少しすると
顔を上げて
俺と目を合わせた


そんなこと
もう分かってたし
親のこと嫌いな人は
山ほどおるのに


「なんとなく
気いついてたけど
ほんまのこと
言うてくれてありがとうな。
俺はそんなこと
なんも気にせんし」


茜は
作り笑いみたいなのを
浮かべて

また
俺の肩に湯をかけた


「結婚したのも…
逃げ出したかったからかもしれない。

結局
戻って来ちゃったけど」



「戻ってきて
面倒見てるけど…
大丈夫なんか?」



「ん〜…苦手だけどね
放ってはおけないし
機嫌のいい時もあるから」


「そぉか」


そう言って
俺は茜を抱き寄せ
髪を撫でた


「暴力振るわれたりは
…ないんか?」


ずっと聞きたかったことやった


「今は…ないよ。
私が中学の頃までは
時々見かけたけど」


見かけた

お母さんが
やられてたっちゅうことか


「大変やったなぁ…」


「今は昔より
怖くないんだけど
やっぱり苦手で…

だから絶対に
離婚したくなくて
頑張ったんだけどね
だめだったの」


「旦那とどのくらい前から
うまいこといってなかったんや?」


「5年くらい…前かな(苦笑)」


そんな前から…


「茜」


「ん?」


「よう頑張ったな」


そう言うと


茜は
突然


涙を流した

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