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好きにさせて

第11章 距離

said 尚



茜が居なくなって

どれくらい
時間がたったんやろう


俺は
茜を引き止めることも
できなかったことを
後悔しながら

ただただ
ソファに座ったまま

「好きな人ができた」

という
茜の言葉を
何度も何度も
頭の中で再生していた



いつから?

いつから
好きな人がおったんや


温泉行った時は
もうおったんか?

ほなあれは
俺と別れること
決まってて
それで
感謝のつもりやったんか?


いや違う

あの時の茜は
そんなんやなかった


ほんまに
俺のこと
好きなんちゃうか?
と、間違えるほど

茜の表情は素直で
何かを隠してるような
そんな感じやなかった


ほな

旅行から帰ってから?



はぁ…


アホやな


いつからやったんか
分かったところで
何になるんや

どうにもならんこと
考えても……しゃあないやんけ…



ソファに寝転がると
台所が目に入り
茜が忘れて行った
エプロンが見えた

と、同時に
さっきまで収まっていた
涙が込み上げ
俺はまた
茜を想って頰を濡らした

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