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桜花楼の恋

第6章 兄弟の絆

・北山side

“月いっぱいまでは金を貰っている”

“だがな宏光それ以降なければ他の客を取って貰うからお前もそのつもりでいろ”

ちっ、藤ヶ谷のやつ。

なんも言わないで帰っちまって、そりゃねぇだろ。あいつ戻って来るのかな?

月が変わるまであと7日とない、このまま行くと俺は。

その夜、何気に店先の様子を覗いてみると。

赤い木の格子に囲まれている場所に数人の男娼たちの姿が見え。

が、道行く人へ手を差し出し積極的に自分の所へ客を誘っている者もいれば。

虚ろな瞳をし、生きた屍みたいになってしまっている奴もいてさ。

なんだか俺は複雑な心境になる、すると。



旦那「気になってどんな様子か見に来たのか?」

北「‥‥っ」

旦那「宏光お前は心配しなくても、あいつらの仲間入りはせん」

北「どうして?」

旦那「いいとこの若さまが手付けの旦那なんだ、それだけで格が違う」

北「格?」

旦那「ここでの階級みたいなものだ、フッ」

北「んたが」

旦那「いい物を見せてやろう私の部屋へ来るがいい」



この旦那、こんな郭をやっていながら言葉遣いや物腰は柔らかい。



旦那「見なさい、ニコッ」



そして、渡されたのは何かを記されている帳面のようなもの。



北「んっ?」



相手の意図が汲み取れないままパラっとそれをめくり見た瞬間、なっ!?なんでぇこれ

北山宏光

・○○屋の旦那、宗平さま
・△△屋の旦那、正衛文様
・◇◇屋の旦那…
・□□屋の旦那…



旦那「買いたいと言われている方がこんなに大勢いらっしゃる、これがどういう意味だか分かるかね?」



あげく、そこにはしっかりと二階堂の名前まで書かれてあってよ。



旦那「お前は、すぐにでも太夫になれるという事だ」



が、中に1つだけ気になる名前があったんだ。

それは━

・先様侍、横尾渉さま

誰でぇ?こいつ。




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